ATM向けデジタルサイネージシステム 導入事例
株式会社イーネット様
デジタルサイネージを搭載した使い勝手に優れた新型ATMの導入によりきめ細かな情報発信とお客様の利便性向上を推進
ファミリーマートをはじめとしたコンビニエンスストア(コンビニ)や、スーパーなどに設置されている全国約1万3000ヵ所の共同ATMの運営事業を展開する株式会社イーネット。同社は、操作性を高めた新型ATMを開発するにあたり、三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)のデジタルサイネージシステムを採用しました。放映コンテンツにあらかじめ提供する地域や業態などの属性を付与し、各ATMとともに設置された放映制御端末が自動的にダウンロードする属性配信技術を用いることにより、運用負荷の低減ときめ細かな情報発信を両立。お客様に対するさらなる利便性の向上を実現しました。
コンビニの利用者層の変化により利用しやすいATMが不可欠に
全国の銀行、コンビニ、システム会社などの共同出資によって設立されたイーネットは、1999年10月に日本で初めてコンビニに共同ATMを設置しました。現在はコンビニ以外にもスーパー、ショッピングセンター、病院関連施設、レジャー施設などに、1万3000台を超す共同ATMを設置し、ATMの管理運営業務を行っています。共同ATMでは、メガバンク、地方銀行、JAバンク、ゆうちょ銀行などほとんどの銀行のキャッシュカードがそのまま利用できるだけでなく、クレジット会社、証券会社、生命保険会社の提携先も増えています。このようにイーネットの共同ATMは、今や生活に欠かせないインフラの1つになっています。
共同ATMの最初の設置から15年が経過し、社会を取り巻く環境も大きく変わり、共同ATMにはより一層の使いやすさが求められるようになりました。代表取締役社長の石原邦浩氏は次のように語ります。
「高齢化の進展やコンビニが提供するサービスの多様化で、コンビニの来店者が変化し、高齢者層や主婦層が増加しています。それに伴い共同ATMにも年齢や性別を問わず、簡単・快適に扱えることが今まで以上に求められてきました。また、東日本大震災以降、全国各地にあるコンビニは情報発信ステーションとしての役割も期待されるようになってきました」
一方で、共同ATMの設置台数が増えたことにより、運用面における課題が顕在化してきました。企画部 統括担当部長 兼 業務部 担当部長の長谷川晃氏は「ATMの利用に関する案内や、提携先の情報などについて、従来はATMの周囲に紙ベースのパネルで告知してきました。しかし、パネルに表示する内容を地域や店舗ごとにタイムリーに変えて欲しいという要望が増えており、これに効率的に対応する方法を検討していました」と語ります。
全国にある約1万3000台の端末に効率的にコンテンツ配信を行う提案を評価
イーネットは新型ATMの開発を進めるなかで、デジタルサイネージのシステム開発においてMDISをパートナーに選定しました。MDISの選定理由について長谷川氏は次のように話します。
「MDISには先行して進めていたATMのキャビネットや入出金の操作画面のデザインを検討する段階から支援いただき、新型ATMの実現に向けた検証を共同で行ってきた実績があります。デジタルサイネージシステムを検討する際にも、機能面、コスト面ともに実情に即した提案をいただいたことが、決め手になりました」
今回導入したデジタルサイネージシステムの特徴は、属性配信技術を実装したことです。
共同ATMの設置場所はコンビニを中心に全国各地に約1万3000ヵ所に及びます。デジタルサイネージに表示するコンテンツの内容は地域や店舗などに合わせて変更することがあります。そこでイーネットでは、設置店舗のエリアや業態などの「属性情報」と「放映期間情報」を、放映するコンテンツにあらかじめ付与しておき、ATMとともに設置された放映制御端末がその属性に合ったコンテンツを自動的にダウンロードする「属性配信技術」を実装することで、きめ細かな情報発信と運用負荷の軽減を両立しました。
コンテンツを全国に配信する通信インフラは安価なPHSや3G回線を採用して通信コストを低減しています。さらに、デジタルサイネージのディスプレイには、長期稼働を前提に長寿命型の産業用ディスプレイを選定しました。企画部 担当部長 兼 業務部 担当部長の若井富夫氏は「デジタルサイネージシステムの開発を進めるなかで、MDISは企画部門や業務部門からの様々な要望に対して、解決策をあらゆる面から検討し、的確に対応していただきました。その結果、スムーズに開発を進めることができました」と語ります。
動画・静止画・テロップによるタイムリーな情報配信を実現
新型ATMについて、事業推進部 担当部長の深江良一氏は次のように説明します。
「操作性を徹底的に追及したことで、従来比で出金取引にかかる時間を約27%短縮しました。また、セキュリティー面を考慮して、背後や横から取引操作の画面がのぞき込まれないように工夫しています。これによって利用者は今まで以上に安心してATMを利用できるようになりました。また、高齢者や主婦層でも簡単に操作できるように、取引画面をわかりやすくしました。備え付けのガイドホンを使えば、目の不自由な方はもちろんのこと、高齢者の方でも安心してお取引ができます」
ATMのキャビネット上方に設置したデジタルサイネージは、21.5インチの液晶ディスプレイを搭載し、静止画、動画(ビデオ、アニメ)、テロップ情報の3つを分割して表示させることができます。静止画面では主に提携銀行の情報やATMの利用に関する情報を表示し、動画やテロップを用いて、コンビニ情報、地域情報等、また振込詐欺防止キャンペーンや選挙の投票呼びかけなどの公共情報を随時配信していく予定です。
デジタルサイネージ用のコンテンツはイーネットが企画、制作してデータセンターにアップロードし、各店舗は店内に設置した放映制御端末にインターネット経由で、属性に応じたコンテンツをダウンロードして放映することができます。
地域情報や公共情報の提供にとどまらないデジタルサイネージのさらなる活用を推進
新型ATMは順次導入を進めていく予定です。今後新型ATMの導入が進むにつれて、デジタルサイネージの効果により、利用率も右肩上がりで伸びていくことが期待されています。業務面では、紙ベースのパネルを廃止したことで、制作コストや設置・交換の運用負荷が軽減される見込みです。
今後は、地域情報や防犯、災害時など公共情報の提供にとどまらず、デジタルサイネージを新たな広告枠として提案することで、提携銀行やコンビニなどパートナーの事業を支援することを検討しています。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、日本国内のデジタルサイネージ市場が2012年比で3.1倍の、2,520億円規模に拡大すると予測されています。若井氏は「コンビニは情報発信基地として、海外からの旅行者に日本や東京をアピールする絶好の場になります。東京オリンピック・パラリンピック観戦に訪れる観光客に対して、デジタルサイネージを活用し、タイムリーにわかりやすい情報提供を行うことも考えています」と述べます。
さらには、デジタルサイネージ単体としての活用も見据えています。
「全国各地で多店舗展開している業態・業界が多くあることから、今回培ったデジタルサイネージのノウハウを活かすことで、より効果的な広告やプロモーションを提案できると考えています」(石原氏)
イーネットは、これからも社会インフラの一翼を担う企業として、お客様に利便性と安全性を兼ね備えた信頼性の高いサービスを提供していきます。
株式会社イーネット:
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2014年5月号(No.196)に掲載されたものを転載しました。