KDDI クラウドオートコール 導入事例
KDDI株式会社様
合成音声で一斉に連絡するクラウド型の電話業務自動化サービスの提供により、お客様の督促・通知業務を効率化
督促や予約確認などで欠かせない電話による連絡業務は、時間を要するだけでなく、オペレーターの精神的な負荷も高いものです。移動通信・固定通信の両方を併せ持つ総合通信事業者であるKDDI株式会社はこうした業務を行っている法人のお客様向けに、電話業務自動化サービス「KDDI クラウドオートコール」を企画。三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)とともに、KDDIのクラウド基盤上にシステムを構築しました。合成音声でメッセージを伝える、付加価値の高いサービスの提供により、お客様の督促・通知業務の効率化を支援しています。
負荷の高い督促・通知業務を効率化するサービスを企画
KDDIは現在、「マルチユース」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」の3つの頭文字からなる「3M戦略」を推進しています。
広範なビジネスを展開する同社の中で、音声系のサービスは創業期から手がける主力事業のひとつです。ネットワークサービス企画部ネットワークサービス企画1グループでは、マルチデバイス向けの内線電話、0AB~J番号(加入固定番号割り当て)、着信課金番号サービスなど、法人・ビジネス向けの「FMCサービス(音声・電話サービス)」を企画、提供しています。
ビジネスの現場で固定通信を使う機会は依然として多くあります。その中で電話利用する企業のお客様が多くの課題を抱えているのが、督促や通知などで電話をかける業務です。
ネットワークサービス企画1グループ マネージャーの田中敬子氏は次のように説明します。
「市場調査を実施したところ、電話発信業務でお困りの企業が多くいらっしゃることが確認できました。例えば、コールセンターなどが未入金のお客様に支払いの督促をしたり、支払期日をお知らせしたりする業務、あるいは、図書館の予約状況連絡や返却督促業務、美容院や歯科医院などがお客様に予約確認の連絡を入れるリマインド業務、宅配業者の配達・訪問の事前案内など多くあります。こうした業務は時間を要するだけでなく、精神的な負荷が大きいものでした」
KDDIではこうしたお客様の課題を解決するため、合成音声を使って督促・通知を自動的に行う「KDDI クラウドオートコール」を企画・開発し、2015年4月からサービスの提供を開始しました。
同サービスは、あらかじめパソコンからお客様に伝えたいメッセージ内容と、通知先の電話番号を設定し、指定時間に一斉に電話をかけて音声メッセージを伝えるクラウド型のサービスです。音声通知はすべてクラウドサービスのシステム側で行うため、利用企業は電話機や電話回線を用意する必要がなく、KDDIから専用の050番号を付与されるため月額基本料金と通話料金だけで利用ができ、自社でのシステム構築も不要です。050番号以外にはKDDIのフリーコール番号が通知番号として利用できます。なお、050番号に折り返しした場合も、システムでの自動応答か人の出る電話番号へ転送設定をするかは、利用者で設定可能です。
同サービスは、KDDI独自の音声合成技術をはじめ、様々なテクノロジーが用いられています。
サービスアプリケーション開発2部 新価値アプリケーショングループ 課長補佐の渡辺慎人氏は「テキストの音声化には、株式会社KDDI研究所が開発した『 TTS(Text To Speech)』、相手先の呼び出しには『電話PUSH機能』、メッセージの応答確認には『自動音声応答(IVR)機能』を採用し、これらをプラットフォーム化して提供しています」と話します。
KDDIの共通基盤上でのアプリケーション構築実績と的確な対応を評価
KDDIはサービス化するにあたり、MDISをパートナーに選定しました。その理由について、渡辺氏は次のように語ります。
「MDISは当社のクラウド共通基盤上でのアプリケーション構築実績がありました。これが選定の大きなポイントとなりました。また、こうした技術力だけでなく、当社の質問に対してレスポンスよく、的確な回答がもらえたことも信頼感の醸成につながりました」
さらに、MDISは同サービスがターゲットのひとつとしている図書館向けのシステムを手がけており、そのノウハウを持っていることも選定の後押しになりました。
2014年10月から始まったシステム導入作業は2015年2月末に完了。約1ヵ月のトライアル期間を経て、2015年4月1日よりサービスがスタートしました。
「システム構築の前段階となる企画の時点からMDISの参画を得て、要望を取り込みながら準備を進められたことが、スケジュール通りの稼働につながりました。また、開発途中で新たにCTIサーバーを追加して、拡張性と耐障害性を高めることになりましたが、こうした変更にも速やかに対応してもらえました」(渡辺氏)
サービスを提供するにあたり、重視したのはお客様が直感的に使えるWeb画面とユーザーインターフェース、そしてセキュリティーです。ネットワークサービス企画部 ネットワークサービス企画1グループ 課長補佐の最上泰進氏は「こうしたシステムに不慣れなお客様でも、すぐに設定や操作ができるように、電話番号の登録や、メッセージの登録などで使うWeb画面にはこだわり、ボタン操作ができるだけ少なくなるように設計しました。また、セキュリティーを重視し、管理者と実務担当者に提供する画面や利用できる機能などの権限を変えました。MDISには当社の改善要望に柔軟に対応してもらい、納得がいくものができました」と語ります。
通話コストや人件費を削減し従業員満足(ES)向上も実現
KDDI クラウドオートコールは、サービス提供開始から、引き合いが寄せられており、採用企業や利用者数が増加しています。「入金督促業務が必須の債権回収業者、修理品対応などの連絡が必要なメーカーの品質管理部門などの大口契約をいただいています。中には、インフラ会社の収納・回収業務部門の担当者から直接お問い合わせをいただいたこともありました。導入したお客様からは、オペレーターの精神的負荷軽減により ES(従業員満足(Employee Satisfaction))向上にもつながったとの評価をいただいています」と田中氏は説明します。
同サービスを導入することで、コスト面でも効果が見込めます。オペレーターが連絡すると、1回の通話時間が長くなりがちで数をこなすことが困難です。コール数が多い場合、何人もの担当者で手分けして行う必要がありました。短時間に一斉に発信する同サービスでは、通信料は固定電話宛てなら3分8円と業界最安値のため、人件費と通信コストを合わせて約50%の削減(1日60件のコールする場合:KDDI計測)が可能です。
継続的な見直しでさらなる利便性向上へ
KDDIでは今後、同サービスを積極的にアピールしていくとともに、サービス企画部門に寄せられたお客様の声を反映し、さらなる利便性向上を計画しています。システム面では、Webサーバーの強化などにより、耐障害性の向上をはじめシステム品質を高めていく方針です。
田中氏は「将来的には、KDDI クラウドオートコールをAPI化してお客様が利用している顧客管理システムや業務系システムなどから直接音声メッセージが送れるようにしたいと考えています。そのためにも、通話内容の録音機能や、メッセージを送った相手からの電話を受けるコールバック機能などの追加を検討しながら、サービスを強化していきます。引き続きMDISの提案を期待しています」と語ります。
KDDIは、これからも付加価値の高いサービスを提供することによって、新たな価値創造へチャレンジしていきます。
KDDI クラウドオートコール:
http://www.kddi.com/business/voice-phone/other/cloud-autocall/
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2015年12月号(No.212)に掲載されたものを転載しました。