電子署名ソリューション 導入事例
三菱電機インフォメーションシステムズ資材部
SAP R/3システムへの「SignedPDF Server」の導入で計上明細書の送付を効率化
三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)の資材部は、同社が受注したシステムを構築する際に必要となる資材調達を行うセクションです。
MDISでは、SAP R/3 導入を契機に経営の効率化を図ってきましたが、資材調達に関わる取引先への依頼や通知については、紙の帳票を郵送、あるいはFAXで対応していました。
そこで同部では、こうした紙文書の送付をより効率的に行うため、MDISの製品である電子署名サーバシステム「SignedPDF Server」を採用。まず計上明細書からEメールでの送信を開始し、印刷、封入、郵送コストの削減に取り組みました。導入から約3ヵ月を経た時点で、計上明細書の出力枚数は導入以前の約1/4にまで減少、また、社内の控えをデータで保存することによって、オフィスの省スペース化も実現しています。
計上明細書送付の労力とコストを削減するために
コンサルテーション、システム構築、ソフトウェア開発、保守・運用、サービスなどのソリューションビジネスを事業領域とするMDISは2001年に三菱電機から分社化して独立。2002年の10月にSAPィ R/3ィを導入し、業務効率の向上を図ってきました。同社の資材部は、MDISの業務に必要なソフトウェア、ハードウェアを含めたすべての資材の調達を行っています。
資材部資材企画課の荻原直彦氏は、同セクションの業務について「当社が受注したシステムの構築を進める中で、必要となるソフトウェア、PCや周辺機器、材料などのハードウェア、あるいは工事・保守・運用といった技術要員などの調達依頼を受けるところから始まります。要求元の依頼内容を受けて、取引先を選定し仕様を伝え、見積りをとり、価格交渉後、発注処理を行います。その後、納品、入庫処理を経て計上し、最後に計上明細書を各取引先に送付して一連の流れが終了します」と、説明します。
SAP R/3導入後、ほとんどの資材業務はシステム化されましたが、計上明細書の送付については手作業の郵送でした。また、この計上明細書は、トータルで約500社分となり、送付用と社内控え双方で月平均約1,000ページにもなっていました。
荻原氏は「これまでは月次で計上処理をすると、自動的にSAP R/3から計上明細書が出力されていました。これを、当課のスタッフが取引先別に分類して封筒に入れ、郵送していたわけです。また、約500社分の控えを保管し、問い合わせがあれば確認したり、場合によっては取引先が紛失したため控えをコピーして再送付するということもありました。あるいは、住所変更があれば、その都度宛先ラベルの変更を行うこともあり、思った以上に負荷が大きい作業だと感じていました」と、当時の苦労を語ります。
そこで、同課ではこの業務の労力とコストを軽減する方法を検討、自社サービスである電子署名ソリューション「SignedPDF Server」に着目し、採用を決定しました。
自動生成したファイルを自動でEメール送信
「SignedPDF Server」の導入後は、同じように計上処理がされた後、紙出力ではなく、SAP R/3からのデータが直接PDF化されるようになりました。この際、電子文書への電子署名が自動的に行われ、MDIS資材部が発行したことと、伝送途中での改ざんがないことを保証しています。
また、取引先へのEメール送信も、登録されたアドレスに自動的に送信しているため、送信する手間がなく、送信漏れなどの心配もありません。一方で、取引先が受信したファイルの真正性を検証するためには、無償提供されている電子署名検証ソフトウェア「SignedPDF Verifier」を自社のパソコンにインストールするだけで可能になっています。
さらに、署名が実施されたことを印影イメージで表示するなど、送信されるファイルが従来郵送していたものとまったく同じフォーマットになっているため、利用者にとっても違和感を与えない仕組みになっています。
荻原氏は「取引先側に必要なものは無償ダウンロードのソフトウェアだけというのは負担もなく賛同を得やすいですね」と語ります。
また、同ソフトウェアの導入を取引先へ積極的に案内した資材部資材企画課の新井友江氏も「取引先様にご説明させていただくときの反応が非常によくて、すぐに導入の回答をいただくことができました。やはり、取引先様の負担が少ないことは大きなメリットですね」と、その効果をにこやかに話します。
印刷、封書作成の手間、郵送コストを大幅削減
導入以前は約500社分、月平均で約1,000ページ出力していた計上明細書は、まず、社内控えをすべてデータ保存することで半分に減りました。また、Eメール送信に切り替わった取引先は、導入から約3ヵ月を経た時点で協力依頼300社に対し設定した当初推進目標である100社を超えて200社に達し、結果的にプリント枚数は約1/4の250ページに減少しています。印刷のコストはもちろん、郵送するときの封書作成の手間や郵送コストも大幅に削減できました。
荻原氏は「郵便だとやはり到着まで何日か要しますが、Eメールは瞬時に到着します。受け取った取引先も、PDFで真正性を確認するだけなので、レスポンスも早い。業務のスピードアップにもつながっています」と、評価します。
また、PDF化したファイルは月別取引先別に蓄積されるため、問い合わせがあった場合の検索性も非常に高くなり、さまざまな面で効果が出ています。さらに、以前は、棚を占領していた計上明細書控えも、半年分がCD1枚程度に収まるため、オフィスの省スペース化も実現できました。
新井氏も仕事の内容が大きく変わったことに触れ、「現在はEメールアドレスの追加や修正があった時のメンテナンスと、問い合わせ時の対応といった作業が主になっています。やはり、計上明細書の枚数が眼に見えて減っているので、毎月封入していた立場からは素直にうれしいですね」と語ります。
到達確認を返信メールでカバー
システムを構築するうえでのポイントは、送付の確実性をどう実現するかにありましたが、その点は取引先に到達確認のEメールを返信してもらうことで解決しています。
荻原氏は「取引先にはメールがついたら返信してくださいとお願いしています。こちらが送ったメールと返信されてきたメールを一覧表で比較し、到達確認をするよう、マニュアルに織り込んでいます」と話します。
また、「SignedPDF Verifier」は、MDISのサイトから無料でダウンロードできるので、そのURLを取引先に通知しています。
この手法について荻原氏は「これは新井からの提案で、配布に関しても工夫しました。まず、システムの利用に同意してくださった取引先には、送付先のEメールアドレスをご連絡いただきます。そして、送られてきたEメールアドレスには"操作マニュアル"を添付して返信するのですが、そのマニュアルにダウンロード先のURLを貼り付けることにしました。そうすることで1回の連絡で、確実にソフトウェアの配布が可能になります」と語ります。
システム開発を担当した情報システム部基幹システム課の海野渡氏は、SAP R/3と「SignedPDF Server」の連携について次のように語ります。
「システム開発は予想以上にスムーズに進めることができたと思います。実際、計画自体は11月にスタートして、システム接続試験などを含めても2ヵ月程度で完成しています。今回の経験は、SAP R/3を導入している企業でのテストとしても、価値あるものになりました」
荻原氏は続けて「新規システムの導入といったことを取引先に依頼した場合、特にその直後はクレームに近い問い合わせがたくさんくるものです。しかし、今回は100社を超える導入例の中でそれがほとんどありませんでした」と、「SignedPDF Server」の導入が、きわめて順調に進んだことを強調します。
新たな情報ルートとしての活用を目指して
今後の課題は、賛同してくださる取引先をさらに増やしていくことがあげられます。現時点では、例えばオープンのソフトウェアのインストールに制限がある企業や取引の頻度が低い企業は、どうしても導入に消極的になるため、部分的にEメール送信と郵送の二重管理になっています。MDIS資材部では、この点を少しずつでも解消したい意向です。
荻原氏は今後の目標について次のように展望します。
「取引先は500社くらいありますが、そのすべてに対して毎月計上明細書を送っているかというと、そうとは限らないので、現在は協力依頼の対象を300社くらいに設定しています。それでも残りは結局紙になるわけで、郵送に頼る部分をどうするかというのが、これからのわれわれの課題です」
新井氏も「未導入の取引先様には、計上明細書を郵送する機会を利用して、毎回導入をお勧めする案内を同封しています。PDFによる計上明細書が、もともと郵送していた文書と、まったく同じイメージだということをご覧いただくことで、導入へと傾く取引先様は少なくありません」と、効率的な周知活動を強調します。
また、「SignedPDF Server」によって取引先との情報ルートが確保できたことで、今後これをどう活用していくかも、新たな課題のひとつになっています。
具体的には、手続き方法の変更など、取引先に通達しなければならない情報ボックス的な利用や、さらには、見積りへの応用も想定されているそうです。見積りに関しては、やり取りが頻繁になるため、解決しなければならない問題も少なくありませんが、ある程度固定的に発注している取引先へは活用できるのではないかと考えています。
見積りへの応用について海野氏は「技術的にはまったく問題ありませんが、見積りの場合は何度かやり取りがあり、同じ会社でも担当者が違うなど、業務プロセスとしての問題は、計上明細書より若干多いでしょう。ただし、郵送やFAXに比べ、レスポンスのスピードもアップするはずですから、それが見積りに活かすことができれば、より大きな業務改善につながると思います」と、語ります。
見積りの場合は、社印などを押印する必要があるため、取引先側にもある程度のシステムをつくらなければなりません。今すぐの移行は難しいとしても、今回のケースで実績を積み、電子署名そのものの認識が浸透していけば、その機運は開けてくるでしょう。MDIS資材部が導入したシステムは、絶好のテストケースとも言えます。インターネット上での電子文書交換が普及していくなかで、「SignedPDF Server」の活用方法もますます広がっていくはずです。
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2004年9月号(No.98)に掲載されたものを転載しました。