新業務システム(工事管理・人事就業管理)の構築プロジェクト事例
白月工業株式会社様
業務連携機能の強化・一元化した新業務システムで業務の進捗を「見える化」するとともに、コンプライアンスの強化を推進
電気設備工事の設計・施工管理、各種システムの設計・施工管理、産業電機機器販売、保守・工機メンテナンスを手がける白月工業株式会社。
同社は、三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)がエレックヒシキ株式会社を通じて提案した業務システムを刷新。ワークフローをベースとしたWeb型の業務システムを構築し、業務の進捗を「見える化」しました。
その結果、各種業務の効率化を行うとともに、コンプライアンスの強化を推進しています。
改修を重ね複雑化した業務システムが課題に
名古屋に拠点を置き、総合電気設備工事会社として60年以上の歴史を持つ白月工業は、自動車関連企業での電気設備工事やライン制御設計などに強みを持つ企業です。今後の事業発展を確実なものとするために、2012年に策定した中期経営計画では、「過度な自動車産業体質からの脱却」「海外での事業展開」「新規事業への取り組み」の3つを掲げ、経営改革に取り組んでいます。
代表取締役社長の八尋修氏は、「過度な自動車産業体質からの脱却を目的に関東圏にも拠点設置することで、営業エリアの拡大を目指しています。また、新規事業として2013年に立ち上げた介護用品のレンタルとリフォームを中心としたライフケア事業が軌道に乗ってきました。さらに、タイ、中国、アメリカに現地子会社を設立し、ビジネスを展開しています」と語ります。
新たなビジネス展開が加速する中で、同社の課題となっていたのがシステムです。電気設備工事や各種制御系システムの設計・施工を支える業務システムは、2000年代前半からVB(Visual Basic)ベースのC/S(Client-Server)型システムを利用してきました。
総務部係長の田中佑典氏は「長年使い続けて改修を重ねてきた結果、システムが複雑化して管理負荷が大きくなりました」と振り返ります。
一方で、同社の独特の業務フローにより、システム運用面での課題もありました。各種工事の設計・施工の管理は、電気工事や制御系の担当者が1人で顧客への営業活動から見積作成、実行予算の作成と予算管理、工事進捗の管理、資材発注までを行います。すなわち各担当者が各々プロジェクトを管理する業務形態を取っています。
しかし、システム内の連携が取れていないため、処理に応じた管理画面を開かなければならず、非常に煩雑な作業となっていました。
そこで、OSのサポート終了を迎えるのを機にシステムを従来のC/S型からブラウザーをベースとするWeb型に移行し、OSに依存せず、業務改善と利便性向上を図るシステムとすることを決定しました。
田中氏は「どのプログラムからも関連する情報を連携・表示するようにし、集約することで業務効率のアップを図るとともに、IT統制によりコンプライアンスを強化することにしました」と語ります。
業務と現場を熟知したシステム化提案とサポート実績を評価
システム化に際しては、まず9社にRFI(情報提供依頼書)を提出して実現可能性を検討。その後4社にRFP(提案依頼書)を送り、各社から出された提案書の中からMDISが提案したワークフローをベースとする新業務システムの構築を決定しました。
その理由を田中氏は、「開発期間が短い中での開発の実現性の高さにあった」と説明します。
「MDISとは従来システムの時から、サーバーの導入やシステムの保守・運用で長期間にわたるお付き合いがありました。そのため、当社独特の複雑な業務形態を熟知しており、かゆいところに手が届く、優れた提案でした」
新業務システムには、MDISが提案したWebシステム向けの統合型フレームワークシステムを採用。電気設備工事や制御系システムの見積作成から、実行予算の作成と予算管理、工事進捗の管理、在庫管理、資材発注、請求書発行、入金管理までの流れは、同社独自の業務フローに合わせる形でスクラッチによって開発しました。
さらに、新たにシステム化した勤怠管理と人事管理の総務系機能についても、スクラッチ開発し、すべての申請業務で共通したワークフロー処理を実現しました。ワークフローを利用することで申請の進捗状況はいつでも確認できるようになっています。
今回は、パッケージをベースに業務ポータルを新たに構築し、業務の「見える化」を実現しています。担当者はポータルにログインすることで、自身がやるべき業務内容や、入力あるいは提出が必要な処理の件数、承認が必要な業務の件数などが、一目で確認ができます。
業務機能の一元化とポータルの導入により業務進捗の見える化を実現
Webシステムへの移行後、当初は戸惑った担当者もいたものの、稼働から1年半以上が経過した現在は順調に活用が進んでいます。導入効果も現れており、業務の効率化は着実に進んでいます。
取締役 海外事業本部 副本部長の八百谷徹氏は「見える化によって、担当者は自分が今やるべきことがすぐに分かるようになり、各種業務で時間短縮が実現しています。従来は業務担当者や総務担当者が、発注状況や支払状況を知りたいと思う都度システムを検索して調べる必要がありましたが、今ではポータル画面上で未処理案件の情報が分かるので、非常に役立っています」と語ります。
また、お客さまから受け取った注文情報をCSV形式でシステムに取り込めるようにしたことで、手入力作業が不要になったため、注文書の処理に要する時間が以前の十分の一ほどに短縮されました。他にも、従来は担当者が一案件ごとの予算残額を表計算ソフトにまとめて管理していたところを一元化し、工事の進捗や予算残額を分かるようにすることで管理する手間がなくなり、業務の効率化につながっています。
コンプライアンスの強化についても、新業務システムは大きな貢献を果たしています。
月次で行っている案件の進捗報告は、「従来のシステムでは担当者が決めた進捗率のみのため、適正か分かりませんでした。案件ごとの予算の消化率や入金情報を表示することで進捗率が適正か判断できるようになり、チェック機能が働いています」と田中氏は語ります。
経営面における導入効果は、工事の完成月による売上見込みが分かるようになったことです。電気設備工事のような業務の場合、工期は1ヵ月から数ヵ月にわたるものが多く、工事の件数自体も膨大になります。
八尋氏は「期末が近づき売上の計上予測を立てる際には、進行中の工事の完成月が決算に大きく影響します。従来は、進行中の案件がいつ完成し、いつ売上げとして計上されるかは、一目で把握できませんでした。実行予算の完成月と出来高を一緒に表示できるようにしたことで、期末の売上計上予測が立てやすくなりました」と話します。
システム化の範囲を拡大し事業発展に貢献するシステムへ
白月工業では、今後EDIによる購買業務の集中化および海外対応を進めていく計画です。
「来期は購買調達部門を立ち上げて、まず、主要な取引先20社程度とEDIによる購買を開始します。現在はFAXで情報のやり取りを行っているため、EDI化されることで当社および各取引先の作業の軽減化が期待できます」(八百谷氏)
また、海外事業の拡大に向けたシステム対応も構想中で、海外の子会社が使えるように、現地の消費税や通貨・法令へのローカライズ対応に向けた検討もスタートしました。今後のシステム化について田中氏は「白月工業の業務を熟知しているMDISには、業務システムだけに限らず、あらゆる方面から積極的な提案を期待しています」と語ります。
白月工業は、各部門の綿密な連携と、豊富な実績によって培ったノウハウと技術力を駆使しながら、お客様の多種多様なニーズに応えていきます。
白月工業株式会社:
http://www.shiratsuki.co.jp/
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2016年12月号(No.222)に掲載されたものを転載しました。