ITアウトソーシングサービスにおける「サーバ統合」事例
イオンモール株式会社様
ITアウトソーシングの一環として47台のサーバを6台に仮想統合し運用コストとCO2排出量の削減を実現
イオングループの中核企業としてディベロッパー事業を担い、国内外でショッピングセンター(SC)の開発・運営を手がけるイオンモール株式会社。同社は、2005年から利用している三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)の「ITアウトソーシングサービス」の一環として、47台の物理サーバを6台の仮想サーバに統合。
保守サポート期限切れ間近のサーバ機器からシステム移行をスムーズに実現するともに、柔軟・迅速な本番・開発・テスト環境を構築しました。サーバ統合効果もあり全運用費の15%削減と年間約500トンのCO2排出量削減を達成しています。
国内外200店舗の出店に向け仮想化による基盤強化を決断
「お客さま第一」を基本理念に、「輝きのあるまちづくり」を進めているイオンモール株式会社。同社では2017年を見据えた「経営ビジョンチャレンジ2017」を策定し、世界のモールベスト5入りを目指す「グローバル5」構想を打ち出しています。
経営ビジョンの達成に向けて、積極的な海外展開を推進するなかで、同社のシステム部門に求められる役割は多様化してきました。管理本部 システム部 部長の安井淳氏は次のように語ります。
「グローバル戦略では、すでに国内外200店舗の出店を視野に入れています。システム部門への要請として、経営的な側面からITガバナンスの強化や、強固なセキュリティー環境の構築が求められる一方、現場では業務の効率化やコスト削減が課題に挙げられています。また、2011年の東日本大震災により、事業継続対策が求められ、CSRの観点からはCO2排出量の削減が必須の課題となっています」
こうした様々な課題を解決するために、各種サーバの統一管理、ネットワークの統合、システム運用管理、社員向けヘルプデスクなどの業務をMDISにアウトソーシングし、イオンモールのシステム部門は企画や開発など経営に直結するコア業務に集中してきました。
事業拠点の拡大を推進する同社では、システム強化により運用するサーバ数が増加し、安定利用に向けた施策が課題として顕在化するようになりました。管理本部 システム部 管理システムグループ マネージャーの岡野有二氏は「近々に保守期限を迎えるサーバからシステム移行を容易にすること、さらなるシステム強化に向けて本番・開発・テスト環境を柔軟かつ迅速に構築できることが不可欠でした」と振り返ります。
ITアウトソーシングサービスの一環として47台の物理サーバを6台に仮想統合
イオンモールは、これらの課題を解決するために、MDISが提案したサーバの仮想統合を決断します。岡野氏は「新旧あわせて約150台のサーバを効率よく管理するためには、仮想統合は必須でした。物理サーバのリプレースでは、システムの改変を迫られることがあり、それがコスト増に直結します。既存環境がそのまま移行できる仮想化であれば、コストを抑えることもできます」と語ります。
仮想化プロジェクトのパートナー選定に関しては、2005年から5年以上にわたるITアウトソーシングサービスの実績が評価されました。
「MDISは当社のシステム部門と緊密な連携を図りながら運用業務を担ってきた実績があり、技術力の高さだけでなく当社の業務も熟知しています。大規模なサーバ集約も安心して任せられると判断しました。また、各システムベンダーとの打ち合わせから社内調整、仮想環境の構築、各システムの移行、稼働後の運用までアウトソーシングの一環として委託でき、運用コストと負荷低減を実現する当社とMDISの両者にとってメリットがある優れた提案でした」(安井氏)
仮想化は、事前検証で稼働評価を行い、サーバの集約台数やコスト削減効果を確認したうえで、47台のサーバを統合することを決定。2010年8月から4フェーズに分け移行作業を進め、2011年9月に全工程を完了しました。移行を4段階に分けたことについて岡野氏は「サーバの保守サポート期限が迫っているシステムを優先して移行する目的がありましたが、フェーズを分けたことにより、前フェーズで培った様々なノウハウが自社内に蓄積され、よりスムーズに作業を進めることができました」と語ります。
また、移行作業を夜間に限定したことで、エンドユーザの業務に影響を与えることなく仮想化統合を完了しました。事前の仮移行にて十分な検証を図ったうえで本番機の仮想化統合を行ったことで、移行後もシステムは安定稼働を続けています。
サーバの仮想統合で運用コストとCO2排出量を削減
イオンモールはこの度のサーバの仮想統合により、様々な導入効果を享受しました。
「課題であった保守期限切れを迎えるサーバの移行と、将来的なシステム拡張や、開発・テストにおいて迅速かつ柔軟に対応できる基盤ができました。そのうえ、運用コストは従来比で15%削減、CO2排出量については、データセンターの空調機器の負荷低減なども考慮すると、年間で約500トン、立木換算で2200本分の削減効果が現れています」(安井氏)
また、サーバ統合に活用したVMwareの機能によって、可用性の向上とともに負荷分散も実現しています。さらに、サーバリソースのさらなる有効活用が実現されたことから、ユーザ部門の要望に応じて容易に新規システムを追加導入できるようになりました。
安井氏は「6年間にわたるアウトソーシングサービスにおいて、MDISはサーバ統合だけにとどまらず、様々な提案をいただき、通信費用の削減といった様々なコスト抑制について当社のシステム部門とともに取り組んでいただきました。こうした積み重ねが今回の大きな成果につながっています」と評価しています。
事業継続性の強化とともにグローバル展開を推進
イオンモールは今後、ITアウトソーシングサービスの適用範囲を拡大することも検討しています。
「システム部門の業務のなかで、まだアウトソーシングできることがあると認識しています。こうした対応までMDISに委託できれば、システム部門のさらなる効率化とともに、システム企画などのコア業務に注力することが可能になります」(岡野氏)
その一方で、イオンモールは BCP(Business Continuity Plan)対策の策定において、イオングループ全体と歩調を合わせながら進めていく計画です。安井氏は「ハードウェアに依存することなく、柔軟にシステムの構築や移行ができるサーバ仮想化は、BCP対策につながる第一歩となりました。引き続きMDISに提案をいただきながら、対策に本腰を入れていきます」と語ります。
イオンモールは、これからもお客さまの視点に立ち、50年後、100年後までその地域で必要とされる「輝きのあるまちづくり」を目指していきます。
イオンモール株式会社:
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2012年1・2月号(No.173)に掲載されたものを転載しました。