ERPシステム 導入事例
日新イオン機器株式会社様
SAP R/3システムを短期導入し、激変する半導体・液晶パネル市場に即応
半導体や液晶パネル製造装置の分野で、独自の技術力を誇る日新イオン機器株式会社。1999年に日新電機株式会社より独立し、事業強化を目指しています。
主力製品であるイオン注入装置とイオンドーピング装置は、半導体ウエハや液晶パネルの製造プロセスの最前線で活躍しています。特に中電流のイオン注入装置では国内シェア70%を占め、多くの半導体メーカーに納入されるとともに、台湾・韓国・中国にも販路を拡大しています。
日新イオン機器では、激変する需要状況に即した製造・販売体制の構築が至上命題でした。そこで現場レベルと経営レベルでの迅速な意思決定を目指し、2003年2月にSAP R/3システムを導入しました。従来、数日を要した現場データの収集・分析がわずか数分で可能となるなど、導入後わずか半年ながら業務改革は着実に進行しています。
ERPテンプレート MELEBUSを採用
日新イオン機器では分社後も、従来システムを使用していました。しかし市場のスピードに合致した独自システムを構築し、グローバルビジネスにふさわしい体制の構築が急務でした。
理事・支配人の湯浅莞爾氏は、「そこで様々なERPシステムを検討し、SAP R/3に決めました。まず従来のバッチ処理による時間的な制約を解消し、納期短縮とリアルタイムの原価把握を目指しました」と導入理由を語ります。
また、各部署に分散していた部品構成マスターのデータベースを一元整備し、保守部材の迅速な供給を可能にするなど、お客様サービスの向上を図る必要もありました。最終的には、経営指標データを随時把握でき、海外ともリアルタイムにデータ交換できる企業体制を目標としました。
R/3導入に際しては、三菱ERPテンプレート「MELEBUS」を採用しました。MELEBUSは、業務への柔軟な適合性と豊富な機能、そして何より迅速な導入が選定のポイントとなりました。
ロジスティックから会計まで幅広い基幹業務を対象に
R/3の対象業務について、営業推進部 部長兼総務部 IT推進センター長の中村俊樹氏は、「人事とCADを除く基幹業務を包括しています。販売管理、生産計画、在庫・購買管理、カスタマーサービスなどのロジスティック分野と、管理会計、財務会計などの会計分野を対象としています」と、システム領域の広さを語ります。
約10ヶ月という短期でビッグバン導入できた背景として、MELEBUSテンプレートの採用とともに、標準機能を最大限に活用しアドオンを最小限に抑えたことも効果的でした。
導入プロジェクトメンバーは原則として所属部門と兼務であり、実務を知り尽くしたメンバーが実践的なシステムを構築しました。
調達における迅速性やコストダウンを実現
R/3は、統合されたデータベースと豊富な機能により、迅速・的確な情報連携をサポートし、強力な業務支援を実現しました。
導入による顕著な効果について、生産革新センター プロダクションプランニンググループ 主任の柴田茂人氏は、「まず調達が極めて迅速になりました。従来、営業が受注後、技術部門、調達部門の確認を経て部材を発注するまで数日を要したのが、導入後は1日で可能になりました」と語ります。こうした効果は、納期を短縮でき、CSを向上させる重要なメリットです。
また調達コストの削減効果も得られました。リアルタイムで複数物件の調達状況や過去の購入履歴を確認でき、システム化された効率よい調達が行えます。データ精度の向上も重要な導入効果です。原価データが一元化され、各部署・各担当者の要求に対していつも正確なデータを瞬時に提供できます。
専任者がいないながらカットオーバーへ
R/3は世界で最も普及したERPソリューションです。R/3とMELEBUSによる業務革新は、独自システムを持っていなかった日新イオン機器にとって、事業拡大への第一歩とも言えます。
しかし導入時の苦労も大きかったようです。湯浅氏は、「これまで当社には情報システムの専任者がいませんでした。ですから設計フェーズから実現化フェーズに至る段階で、苦労が多かったのは事実です。各業務モジュールごとに実務に忙しい部門担当者が集まり、移行・カットオーバーに漕ぎ着けました」と当時を振り返ります。
また運用ポリシーの設定にも試行錯誤が必要でした。つねに迅速・的確なデータを得られるよう、今もノウハウが蓄積されています。
ビジネスウェアハウスの構築へ
海外拠点との連携へ
今後、導入効果をさらに高める努力も不可欠です。総務部IT推進センター 主任の細野真裕氏は、「例えば、経営指標の常時一覧により、部署および経営層における管理レベルを向上させること。納入装置情報の一元化により、保守体制を強化しCSを一層向上させること。さらに設計手配情報の統合により、設計標準化、納期短縮を今以上に目指します」と近い将来を展望します。
そのためには現状のインターフェイスを、さらに使いやすく改良することも必要です。無形のノウハウを集積したビジネスウェアハウス構築を目指すうえでも、優れた操作性は重要な要件です。また海外拠点でのR/3導入と、国内とのリアルタイム連携も視野に入れています。現在、国内外の景況が明るさを見出しつつあります。半導体や液晶パネルの激動するマーケットで、より確実な地位を確立するために、成長し続ける日新イオン機器のR/3システムは、これからも経営を支援していくことでしょう。
日新イオン機器株式会社:
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2003年12月号(No.89)に掲載されたものを転載しました。