プロフェッショナルが語る
RPAソリューション
生産性向上のカギは業務プロセスの「見える化」とRPA向きの業務を見極めること
RPA(Robotic Process Automation)は、当初、銀行や保険会社など金融業界での導入が先行していましたが、最近では様々な分野の企業がRPAの活用に取り組み始めています。企業は、実際にどのようにRPAを活用しているのでしょうか。また、RPAを導入・活用するにあたってのポイントは、どのようなものがあるでしょうか。三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)金融事業本部 金融第二事業部 金融システム営業部の浅香宏之氏に伺いました。
金融業界にとどまらず様々な業種で導入が進むRPA
浅香氏は、RPAの活用ノウハウを横断的に集積するために、金融機関を中心に様々な業種へRPAソリューションを提供しています。浅香氏は、現在のRPA市場を次のように分析します。
「RPAという技術そのものは、以前から存在していました。最近になって大きく注目されるようになったのは、やはり人手不足などによって生産性向上の必要性が高まったことにあります。3年ほど前から銀行や保険会社など金融業界で導入が始まり、その成果が知られるようになったことで、昨年あたりから他の業種でもRPAに対する取り組みが盛んになってきました」
MDISは、RPAのソリューションをワンストップで提供できることが強みとなっています。また、扱うRPAツールは、基幹システムから業務パッケージまで自動化が可能です。
「RPAツールによっては、対応アプリケーションに制限がありますが、MDISが提供するソリューションは、人と同様にパソコン画面の文字を認識して動作するため、より多くのアプリケーションを連携した自動化への対応が可能です。現場で手軽に使えるものからより細かなチューニングが可能なものまで、お客様に合ったソリューションを提供しています」(浅香氏)
実際に企業はどのような作業をRPAで自動化しているのでしょうか。浅香氏は、いくつかの参考例を挙げました。
「あるお客様では、営業系・発注系・勘定系といったように、複数の独立した基幹システムがあり、システム間のデータ連携は人が行っていました。そこで、データを一度入力したあとはRPAが自動的にコピー&ペーストでデータ連携できるようにして、効率化とミスの削減を図りました」
上記の例は、バックオフィスにおける典型的なRPA活用と言えるでしょう。
ユニークなケースとしては、通販会社の受注システムがあります。その会社では、顧客からの注文内容を電話オペレーターが紙に手書きし、それを別のスタッフがシステムに入力するという方法をとっていました。このプロセスを効率化する際、一般的には電話オペレーターが最初からパソコンに入力する方法が考えられます。しかし、そうするとオペレーターにパソコン操作のスキルが求められ、人員の入れ替えやトレーニングが必要になります。そこでMDISでは、紙の受注伝票を OCR(光学的文字認識(Optical Character Recognition))で読み取り、人間がチェックした後、RPAで自動的に受注システムに入力するソリューションを提案しました。
「OCRとRPAを組み合わせることで、効率が上がるだけでなく入力ミスの削減や紙の受注伝票の紛失事故防止といったメリットがあります。また、このお客様の場合は、効率化によって、受注業務により多くの人員を配置して売り上げの向上を図る狙いがありました」(浅香氏)
効果を実感すると現場から次々とアイデアが湧いてくる
MDIS社内でも、実証実験を兼ねてRPAの活用を進めています。例えば、エンジニア部門では顧客に毎月のシステム管理状況のレポートを送っています。これまでのレポート作成は、Excelのマクロで生成した多数のグラフをひとつずつWordにコピー&ペーストする作業が大部分を占めていました。これをRPAで自動化することで、レポートの作成時間が大幅に短縮し、レポート内容の充実、具体的には分析業務に注力できるようになったといいます。
「このコピー&ペーストの繰り返しを自動化したときには、担当者は効果を実感するだけでなく、とても感動していました」と浅香氏は語ります。
その他の使い方としては、交通費や出退勤時間の確認作業の自動化があります。申告された交通費の額が正しいかどうか、勤務時間と実際の入退出時間に矛盾がないか、といったチェックは、それまで人手による検索や照合によって行われていましたが、これもRPAによって自動化することが可能です。
「部下がサービス残業をしていないかチェックするために、上司が残業しなければならないという状況への改善が見込まれます」(浅香氏)
このように、RPAは現場のアイデア次第で様々な活用が可能です。
「RPAがどんなツールかを一度理解すると、現場から次々とアイデアが出てくることが多いです」(浅香氏)
活用のポイントは事前に業務プロセスを「見える化」すること
RPAに向いている仕事の特徴としては、①処理量が多い、②月末など定期的に発生する、③季節変動が大きい、④様々なフォーマットや複数のシステムにまたがっている、といった要素が挙げられます。
ただし、浅香氏はRPAがあらゆることを自動化できる魔法のツールではないことを強調します。
「RPAは、あくまで人の作業を代行してくれるツールで、すべての作業を任せられるシステムではありません。無理に完璧を求めると、現場で軽く使えるというRPA本来の良さが失われてしまいます。また、RPAによる処理は、対象アプリの実行速度以上に早くならないことや、要所で人によるチェックが必要だということを理解しておく必要があります」
RPAの導入は非常に手軽で、単純な自動化なら、早ければ1週間ほどでインストールから実運用まで行えます。導入は、自社の業務プロセスがきちんとマニュアル化、見える化できている企業ほど、素早く効果的な運用が行えると浅香氏は言います。
「RPAがいち早く金融業界に導入されたのは、もともと業務のほとんどがルール化されており、自動化に適したルーチンワークがどこにあるかを調べやすかったからです。昨今では業種、業態に関係なく導入が進んでいます。一般的には、業務の分業化が進んでいて、ルーチンワークが特定の部門に集中している企業ほど、RPAの効果が出やすい傾向にあります」
MDISは、現在の業務プロセスを「見える化」するソリューションも提供しています。どこを自動化すれば良いかという分析のサポートも可能です。
「お客様自身でRPAを設定し、作業の自動化ができるようになることが重要です。私どもも最初のステップのお手伝いがしっかりとできるように心がけています」(浅香氏)
この記事について:
この記事は、情報誌「MELTOPIA」2017年10月号(No.230)に掲載されたものを転載しました。